イブキゼリモドキ

top
セリ科 Apiaceae
セリ科 Umbelliferae
丈は0.3-1m、全体にやや軟弱な感じで、葉は柔らかく、5-10cmの1-2回3出羽状複葉で小葉は卵形で更に切れ込み、先が尖ります。
花はやや小さい複散形花序に付き、総苞片は1-2個、少数の小総苞片もあり、いずれも細い。
ミヤマセンキュウと葉が似ていますが、小総苞片の長さと数で見分けられます。よく似たセリモドキにある節の毛は、本種には見られません。
なお、一部の図鑑等で「イブキゼリ」の記載が見られますが、セリモドキも同様に呼ばれた経緯から混乱するため、現在この名は使用されません。

 

2017.7.23 更新
  • 全体
  • 全体2
  • 全体3
  • 花2
  • 花3
  • 花4
  • 葉2
  • 和名の混乱について

イブキゼリモドキ-全体

エゾボウフウとも似ていますが、総苞片、小総苞片があります。
(2012.7 青森県八甲田山)

イブキゼリモドキ-全体2

エゾボウフウとも似ていますが、総苞片、小総苞片があります。
(2007.6 礼文)

イブキゼリモドキ-全体3

(2017.7 青森県八甲田山)


イブキゼリモドキ-全体2

(2007.9 長野県栂池)


イブキゼリモドキ-花2

(2007.6 礼文)


イブキゼリモドキ-花3

複数の線形の小総苞片が見られます。
(2017.7 青森県八甲田山)

イブキゼリモドキ-花4

総苞片は線形で1-2個。
(2017.7 青森県八甲田山)

イブキゼリモドキ-実

(2012.8 青森県八甲田山)


イブキゼリモドキ-葉

葉は1-2回3出複葉、小葉は卵形で更に切れ込みます。
ミヤマセンキュウのように先は長く伸びません。(2012.7 青森県八甲田山)

イブキゼリモドキ-葉

上部の茎葉。
(2007.6 礼文)

イブキゼリモドキ-茎

節に毛はなく、葉の基部は膨らまない。
(2012.7 青森県八甲田山)

以下の2種において、「イブキゼリ」の名称が使用され、混乱が見られますので、経緯を含めて整理してみました。

イブキゼリモドキ(ニセイブキゼリ コイブキゼリ) Tilingia holopetala 基準標本 福島県岩代町 分布 北海道~中部(福井県荒島岳が西限、南限)
セリモドキ(タニセリモドキ) Dystaenia ibukiensis 基準標本 滋賀県伊吹山 分布 東北~近畿(兵庫付近)

図鑑等で見られる「イブキゼリ」はイブキゼリモドキのことで、1950年代の牧野植物図鑑及び、これをベースに記述された図鑑などにこの記述が見られます。
(牧野植物図鑑では以前の学名、Carum holopetalumで記述されており、YListの文献情報でも確認出来ます)

一方、「イブキゼリ」の本来の語源は伊吹山に産するセリの意味で、ibukiensisの学名が示すとおり、セリモドキが相当します。伊吹山周辺では以前からセリモドキを「イブキゼリ」と称することが多いようで、イブキゼリモドキは「イブキゼリ(=セリモドキ)に似ている」という意味の名です。(伊吹山のセリモドキの意味ではない・・・「ゼ」であることに注目)

2種に「イブキゼリ」の名称が使用された結果、特に図鑑などで「イブキゼリ」=イブキセリモドキと承知されている方々の間で、伊吹山のものはイブキゼリモドキであるという誤解が生まれ、それが継がれて長年にわたって誤解が常態化してしまっているようです。さらに、伊吹山のガイドブックでも、近年「ニセイブキゼリ」(イブキゼリモドキの別称)が使用されているとのことで、混乱を広げてしまっているようですが、伊吹山にはイブキゼリモドキは自生しないそうです。

なお、両者はよく似ていますが、節に毛が見られるのがセリモドキです。
以上は現地で確認したものではなく、文献などの情報なので、伊吹山へ行かれる方は、真偽のほどをご確認頂ければと思います。