ヤチコタヌキモ

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タヌキモ科 Lentibulariaceae
根のない浮遊水生の食虫植物。
茎は約20cmまで。葉は浮遊するか、泥上を匍い、まばらに二叉状に枝を分け、全体の姿が扇形、最終裂片は線形で扁平、微細な鋸歯が見られ、先端は鋭頭。捕虫嚢は葉にごく少数付き、多くは地中茎に付きます。
花は8-20cmの花茎に2-5個付き、花は1.5cm。果実はできない。
よく似たコタヌキモは、葉に捕虫嚢はつかず、葉の最終裂片に鋸歯があり、先はやや鈍頭。ヒメタヌキモは葉に捕虫嚢を付け、葉に最終裂片に鋸歯はなく、花は黄緑色。

注:地中茎を地中葉と表現する記述も見られますが、角田康郎著「日本の水生植物」に習って地中茎としました。
従って上記の葉は水中葉を指す。

 

2020.4.23 更新
  • 全体
  • 葉2
  • 葉3
  • 葉4
  • 葉5
  • 葉6
  • 捕虫嚢
  • 捕虫嚢2
  • 付記(2017.2 改)

ヤチコタヌキモ-全体

手がわずかに届かない距離で、葉を確認するに至りませんでした。
(2011.7 福島県尾瀬)

ヤチコタヌキモ-花

下唇中央のふくれた部分には、イヌタヌキモのような赤い斑がありません。
(2011.7 福島県尾瀬)

ヤチコタヌキモ-葉

これではよくわからないと思いますが・・・。
(2009.9 福島県尾瀬)

ヤチコタヌキモ-葉2

池塘で見られたもの。
(2015.7 青森県八甲田山)

ヤチコタヌキモ-葉3
中央は水中茎と葉、葉には捕虫嚢が1つ見られます(3)。
(1)はその葉腋から伸びる地中茎で小さな捕虫嚢が付いています。
(2)は別の株の地中茎のようです。(2013.8 青森県八甲田山)

ヤチコタヌキモ-葉4

地中茎にもまばらに痕跡的な葉が付くようです。緑色の葉の部分は水中葉。
(2015.7 青森県八甲田山)

ヤチコタヌキモ-葉5

水中葉にも捕虫嚢(矢印)が少し付くことがあります。
(2015.7 青森県八甲田山)

ヤチコタヌキモ-葉7

葉の裂片は線形で扁平、先端は鋭く尖っています。
非常にわかりにくいですが、微凸状の鋸歯が見られます。(2013.8 青森県八甲田山)

ヤチコタヌキモ-捕虫嚢

捕虫嚢を基部側から見た状態。口部に2本のやや太い口ひげ (矢印) があり、
細い毛が多数見られました。(2015.7 青森県八甲田山) 

ヤチコタヌキモ-捕虫嚢2

虫を吸い込んだ捕虫嚢。吸い込んだばかりのようで、虫はまだ生きていた。
触毛は分岐もするようでした。(2017.5 青森県八甲田山)

八甲田山のものについて、筆者は「ヤチコタヌキモ」と判断しておりましたが、「コタヌキモ」との見解もあり、2016.8、人づてに京都大学・角野康郎先生に資料をお送りして同定をお願いいたしました。

その結果、ヤチコタヌキモとコタヌキモの両方が見られるとの回答を頂きました。

また、ヤチコタヌキモはコタヌキモとヒメタヌキモの雑種起源の植物であり、ヤチコタヌキモにコタヌキモやヒメタヌキモが共棲することはそれほど珍しくないとのご見解でした。

ここに掲載の写真のうち、2013.8、2015.7のものは、今回の同定に用いた写真の一部です。なお、コタヌキモについては写真が揃わず、掲載は見合わせました。

今回は国立公園内であり、採種許可を頂いておりませんので、主として写真評価によるものです。撮影した個体数は10個体に満たず、実際にどのように分布しているのかも判りませんので、できれば今後も観察したいと思っています。