(型) ワニグチソウの突然変異型 または イブキワニグチソウ

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クサスギカズラ科 Asparagaceae
ユリ科 Liliaceae
ワニグチソウの特異的な変異で、苞が小花柄の基部に2枚付く他に、花の基部にも同形でやや小型の小苞が1枚付くもの。1つの花柄に付く花数も1-4個と変化が多い。葉や花、果実は普通のワニグチソウと同じ形状。
特異ではありますが、各地で確認されています。

追記:本種はイブキワニグチソウ P. ibukiense の可能性がありますが、資料不足のため、特定を避けました。詳しくは、経緯タブの追記2をご覧ください。

 

2018.5.12 更新
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  • 経緯

イブキワニグチソウ-全体

一見、花付きの良い理想的な姿普通のワニグチソウに見えますが・・・
苞が2重に付いている。(2014.5 千葉市B)

イブキワニグチソウ-全体2

花が4つ付くものも出現しました。写真では花が左から3つ、4つ、2つで、
苞は5つ、6つ、4つ。(2017.5 千葉市B)

イブキワニグチソウ

(2023.5 千葉市)


イブキワニグチソウ-花

小花柄の基部の苞の他に花の基部に小苞が付いています。ここでは同所的に
普通のワニグチソウ、ミヤマナルコユリナルコユリが見られます。 (2014.5 千葉市B)

イブキワニグチソウ-花2
花が3つ付くもの。本来の2枚の苞の他に、それぞれの花ごとにa,b,cの小苞が
付いています。推測ですが、苞から直接出る小花柄はA,Bの2本で
Cの花はAの花の基部から再分枝して付いていると思われます。(2014.5 千葉市B)

イブキワニグチソウ-花3

花が終わり不稔だったもの。花の基部に苞が1ずつ余計にあるのがわかります。
(2017.5 千葉市B)

イブキワニグチソウ

花自体はワニグチソウと変わらず、花糸離生部は膨らんでいる。苞のみが変異している。
(2023.5 千葉市)

イブキワニグチソウ-実

果実が出来ていたもの。果実の形や大きさは普通のワニグチソウと変わらないようでした。
1つは不稔のようです。(2017.6 千葉市)

イブキワニグチソウ-実2

まだ熟し切れていませんが・・・。
(2017.9 千葉市)

「千葉市B」で発生している型のものは、同時に複数株で出現しましたが、2017年現在、序々に増えだしています。

この個体群は2014年に初めて見つけたものです。
当初は個体数は3で、交雑である可能性は低く、この個体に限った「奇形」であろうと推定されました。理由は、交雑ならば中間形態で出現することが多いが、もう一方の親となるべき植物が考えにくいとの見解でした。(アマドコロ属で花序が分枝するものはありますが、苞があるのは本種のみで、小苞があるものはない)

その後、個体数が少しずつ増えたことから、再度、千葉県博・天野誠先生にご教唆頂き、 「単純な奇形ではなく、遺伝的なもの」「苞が二回分化してから花が形成される遺伝的変異」であろうとのお答えを頂きました。

なお、その後、果実も確認でき、少し離れた場所でも新たに見つかったことから、栄養繁殖の他に、種子による繁殖もしているのではないかと思われます。

追記 (2018.5.12)
2018年までに、新たに千葉県内の2カ所で、同じような形態のものが見つかりました。2番目の苞は小花柄の途中に付くことから「小苞」のようにも感じられます。いずれも普通のワニグチソウに隣接するような形で群落を作っており、個体数も少なくありません。もう少し様子を見たいと思っています。

追記2 (2018.11.30)
神奈川県自然史資料(8):45-47 Mar.1987 (大場達之) にこの個体の特徴と似た記述が見つかりました。「苞が4-7枚付く」とあり、「イブキワニグチソウ」と銘々されているようですが、「区別すべきほどのものではないと考えられる」とも記述されています。
Y-Listではイブキワニグチソウは独立種として扱われていますが、ノートには奇形若しくはsynonymとの付帯意見も記述されています。
私の個人的な意見としては、同一の形状が複数箇所で見られること、遺伝的継承性があることから、とりあえず品種相当かなと思っています。
なお、大場論文では「苞片の多いワニグチソウは花つきが悪く, 蕾が途中で萎縮 して開花に至らないものが多い。」 との記述もありますが、千葉県内のものはこの件に限って当てはまりません。