(型) イチヤクソウのアルビノ <特殊なケース>

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ツツジ科 Ericaceae
イチヤクソウ科 Pyrolaceae
イチヤクソウのほぼ完全なアルビノ状態のもの。
クロロフィルが完全に欠損しており、かつ開花し結実しています。
(2022.6) 発見から4シーズンが経過し、この状態が維持され、且つ開花も見られることから、掲載のものは真正のアルビノと思われる。

 

2019.6.24 作成
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イチヤクソウ(アルビノ)-全体
花は終わっていますが、この状態で開花していたことは
確認されています。 (写真を頂いています) 葉はやや小さく少ないものの、
弱っている様子はなく、色以外は健全に見えました。(2019.6 千葉県)

イチヤクソウ(アルビノ)-実

結実しているように見えます。(雨に濡れています)
(2019.6 千葉県)

イチヤクソウ(アルビノ)-葉

葉はほぼ完全に白化しており、柄に赤みだけが残っており、
ほかの色素の合成はされているようです。(2019.6 千葉県)

イチヤクソウ(アルビノ)-葉2

わずかに赤みがあるようにも見えますが、肉眼では気づかず、写真のホワイトバランスのせいかもしれない。(雨に濡れています) (2019.6 千葉県)

植物体におけるアルビノとは、先天的な遺伝子の疾患により、「クロロフィルが合成できずに光合成組織が白化した個体」 () を指します。

従って、クロロフィル以外の色素の合成が可能 (例えば、花に赤や黄色の色が付いていたような場合) でも、茎や葉が白化していればアルビノです。

慣習的に白花をアルビノと称することがありますが、本来の意味では花色はアルビノと何ら関係はありません。 (白変種と呼ぶのが良い)
また、多くの場合、アルビノ個体は光合成ができないため、「種子中の栄養を使い切ってしまった時点で枯死」 () します。

なお、動物学においては、「メラニンの生合成に関わる遺伝情報の欠損により先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患がある個体」 (※) を指します。
人類にもまれに生じますが、植物のように直ちに生命に危険が及ぶわけではなく、紫外線の防御機能がないことがリスクになります。

 「 」内は wikipedia より原文のまま引用しました




写真の個体は、完全にクロロフィルが欠損しており、それだけでも希有ですが、さらに極めて例外的に開花し、加えて結実までしていると思われる個体です。(お教えくださった方によれば、発見した蕾の時点でアルビノであることを確認したと聞いています。)

通常では絶対にあり得ないと思っていただけに、見たときは大変驚きました。

ただ、この個体(群)は昨年以前は気づかれていませんでしたので、「先天的な遺伝子疾患」なのかどうかは不明で、後天的な白化との疑いは残ります。(例えばウイルス性の病変とか・・・)

一般的に、後天的な異常は先天的なものより生命力があるとも聞きます。
イチヤクソウが半寄生植物であることで、クロロフィルがなくても寄生主から栄養補給が続いているのかもしれません。

今後数年、観察を継続し、ご報告したいと思っています。

追加情報 : 2020.6 もアルビノの状態でしたが開花は確認できませんでした が、僅かですが個体数を増やしているように感じます。 一過性のものではないことは確認できました。




2020.4 北海道大学総合博物館、神戸大学、札幌市内の有志の研究グループより、イチヤクソウのアルビノ個体発見の論文がAmerican Journal of Botany誌に掲載されました。

札幌近郊で発見された同様のものを基にしたもので、ラン科植物以外では被子植物のアルビノは初めての発見と記されています。(発見は2017年頃のようです)

それ以外でも、インターネット上では四国山中のものと思われるものが掲載されていますが、極めて希少であり、且つ学研的に重要な意義のある研究材料だそうです。

なお、千葉のものについては、千葉県博と某大学で検討が進められています。

最初に申し上げた論文の内容をわかりやすく解説したものは、神戸大学のポームページで閲覧出来ます。以下からご覧ください。
イチヤクソウのアルビノを札幌で発見 〜ラン科以外の被子植物で初〜 | Research at Kobe (kobe-u.ac.jp)

論文はこちら
Evidence for newly discovered albino mutants in a pyroloid: implication for the nutritional mode in the genus Pyrola
DOI:10.1002/ajb2.1462