侵略的外来生物2 国際自然保護連合の指定植物


国際自然保護連合の指定植物

国際自然保護連合(IUCN)により、「世界の侵略的外来種のワースト100」が提示されています。このリストは、単に生物多様性の破壊に留まらず、人の生活、職業等を困難にし、更に2次的な被害を生じさせている様々なパターンをリストアップしたもので、以下の基準から選ばれています。

1.生物の多様性および人間活動に対する深刻な影響
2.生物学的侵入をめぐる重要な事柄の表現
(ICUN日本委員会ホームページから転載)

100種のうち、植物は36種が指定されており、その中には、日本から海外に拡散した植物も含まれています。
36種のうち、8種は在来植物ですので、残り28種中、27種は外来生物法の対象種に指定されており、既に9種が日本に定着しています。

和種名は標準名があるものはそれを用いましたが、ないものは環境省の呼称をそのまま用い、筆者が認知している他の呼称を( )で記しました。*印は和種名がなく、学名をそのままカタカナ書きしています。
学名は環境省のものを用いましたが、ICUNの原記載と異なるものは、( )で併記しました。
その他
・日本の対応欄 : 「特定」は特定外来生物、「要注意」は要注意外来生物、「保護」は絶滅危惧指定種
・侵入実績欄 : 「未導入」は研究・植栽も含め国内に持ち込まれた報告のないこと、「未定着」は植栽されているが逸出し定着した報告がないこと

●水生植物
和種名 学名 原産地 国内の
自然分布
日本の
対応
日本への侵入実績 他特記
イチイヅタ (イワヅタ) Caulerpa taxifolia 熱帯地域 沖縄 規制なし 一時、能登半島で繁殖
オオサンショウモ Spartina anglica   特定 兵庫に定着
ホテイアオイ Eichhornia crassipes 南米 要注意 本州以南で広範囲に定着 在来種に被害大
ワカメ Undaria pinnatifida 日本・朝鮮半島 日本海側 規制なし 日本から船舶のバラスト水に載って世界中に拡散 豪州で水産業に被害
●陸生植物
和種名 学名 原産地 国内の
自然分布
日本の
対応
日本への侵入実績 他特記
アカキナノキ Cinchona pubescens 南米 指定なし 未定着 温室栽培
マラリアの特効薬キニーネを抽出
アメリカクサノボタン Clidemia hirta 中南米 要注意 未定着 温室栽培
アメリカハマグルマ
(ミツバハマグルマ)
Sphagneticola trilobata
(Wedelia trilobata)
中米 要注意 沖縄に定着 暖地で植栽
イタドリ (注3) Polygonum cuspidatum 東アジア ほぼ全国 規制なし 園芸用として日本から持ち出され、欧州・米国で拡散 英国では農業及び日常生活に被害
エゾミソハギ Lythrum salicaria ユーラシア・北米 九州以北 規制なし  
オオバノボタン Miconia calvescens 南米 要注意 未定着 温室栽培 沖縄に植栽
カエンボク Spathodea campanulata 西アフリカ 要注意 未定着 温室栽培 沖縄に植栽
カユプテ Melaleuca quinquenervia オセアニア 要注意 未導入
キバナシュクシャ Hedychium gardnerianum インド北部 要注意 未定着 温室栽培 沖縄に植栽
キミノヒマラヤキイチゴ Rubus ellipticus 南アジア 要注意 未導入
ギンネム Leucaena leucocephala 中南米 要注意 小笠原、沖縄、南九州に定着
クズ (注4) Pueraria lobata 日 中 東南アジア 全国 規制なし 園芸用として日本から持ち出され、米国で拡散 農業等に被害
サンショウモドキ Schinus terebinthifolius 南米 要注意 小笠原に定着 沖縄で植栽
テリハバンジロウ
(キバンジロウ)
(ストロベリーグアバ)
Psidium cattleianum ブラジル 要注意 小笠原に定着 沖縄で植栽
セイロンマンリョウ Ardisia elliptica 中南米 要注意 温室栽培 沖縄に植栽
センニンサボテン Opuntia stricta 北米~南米 要注意 未導入
タマリクス・ラモシッシマ * Tamarix ramosissima 東アジア 要注意 未定着 園芸流通あり
ダンチク Arundo donax アジア 地中海沿岸 南関東
以西
規制なし  
チガヤ Imperata cylindrica アジア アフリカ
オセアニア
全国 規制なし  
ハギクソウ (注1) Euphorbia esula 東アジア 西アジア ロシア 欧州 中部地方 保護 日本では絶滅危惧ⅠA類
ハリエニシダ Ulex europaeus イタリア 要注意 神奈川、和歌山、島根、四国に定着
ヒマワリヒヨドリ Chromolaena odorata 中南米 要注意 沖縄に定着
フランスカイガンショウ Pinus pinaster フランス 要注意 未導入
プロソピス・グランドゥロサ*  Prosopis glandulosa 米国 メキシコ 要注意 未導入
ホザキサルノオ (注2) Hiptage benghalensis (確認できず) 沖縄? 規制なし 第3次レッドリストではDDとされたが、第4次では削除された
ミカニア・ミクランサ * Mikania micrantha 北米~南米 要注意 未導入
ミモザ・ピグラ * Mimosa pigra 中南米 要注意 未導入
モリシマアカシア Acacia mearnsii オーストラリア 要注意 未定着 沖縄に植栽
モレラ・ファヤ *
(ミリカ・ファヤ)
Morella faya
(Myrica faya)
不明 要注意 未導入
ヤツデグワ Cecropia pletata 中南米 要注意 未定着 温室栽培 沖縄に植栽
ランタナ (シチヘンゲ) Lantana camara 中南米 南欧 要注意 小笠原 沖縄 本土南岸に定着
ただし被害は少ない
リグストルム・ロブストゥム*  Ligustrum robustrum スリランカ 要注意 未導入


(注1) : ハギクソウはIUCNでは侵略的外来種ですが、日本では絶滅危惧種で保護対象です。
(注2) : ホザキサルノオは沖縄県での確認が進まず、在来種か外来種か判定できていないようです。第3次レッドデータブックでは不明種(DD)で記載されていましたが、第4次レッドデータリストでは削除されています。
(注3) : 特に欧州で猛威をふるっており、アスファルトを持ち上げたりコンクリートを割ったりと、天敵のいない地で益々力強い生命力を発揮して被害を拡大させており、英国ではイタドリ専門の駆除会社があるそうです。
(注4) : 米国で農業への被害が多く出ているようですが、家屋を覆い隠してしまうような被害も出ているとのことです。

参照資料 環境省自然環境局外来生物法のサイト、国立環境研究所侵入生物データベース、
ICUN日本委員会のサイト、wikipedia を参照して記述しました