アキノタネツケバナ <観察継続中>

アブラナ科 Brassicaceae
アブラナ科 Cruciferae
晩秋~早春に見られるタネツケバナ。茎は倒れて地を匍うように伸び、下部に毛が多く見られ、しばしば側枝の基部から発根して繁殖します。
(以下、観察による記述)
丈は10-15cm、根生葉は少なく時に単葉で、ロゼット状にならなず、花期には失われていることが多い。茎葉は羽状複葉で頂小葉はやや大きく、側小葉も含めて裂けます。
花は総状に付き、小型、果柄はやや短く、茎から離れて付きます。
なお、名前から秋咲きの印象を受けますが、採取された標本が10月であったためにその名が付けられたようです。暖地では、タネツケバナやミチタネツケバナもふつうに秋に咲きます。

 日本の野生植物では、事実上、結論を保留している

 

2020.11.28 更新
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  • 花2
  • 花3
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  • 以下詳細観察
  • s1
  • s1-2
  • s1-3
  • s2
  • s2-2
  • s3
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  • 全体5
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  • 比較用
  • 同2
  • 同3
  • 同4
  • 私見
観察継続中につき、近日、再修正する可能性があります。
アキノタネツケバナ-全体

畑の脇の杉林の陰になるような苔むしたところに、まとまって沢山見られました。根生葉が見られず、茎が匍うなど、ふつうじゃないなと思って見ていました。(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-全体2

根生葉に見える葉が大抵1-2個あるものの、抜いてみると茎葉。
(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-全体3

基部に葉が全くなかったもの。
(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-全体4

まだ花の付かない若い株。この中にも根生葉と言えるような
根際に付く葉はなかった。(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-花

花は総状、果実はやや離れて付く。果柄はやや短い印象。
(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-花2

花はタネツケバナより小さい。雄しべは6。
(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-花3

わかりにくいので、採取した花で撮影し直した。
(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-花4

計測したら、花弁は4mm弱、萼は1.5-2mmほどでした。
(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-実

果実は開出、斜開。柄はやや短く感じた。

アキノタネツケバナ-葉

茎葉は羽状複葉。小葉は3-9個くらいで頂小葉が大きく、
浅く裂けて先は丸いか鈍頭でした。(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-葉2

小葉裏。無毛かと思っていましたが、多少あるようです。
(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-茎

茎に・・・特に茎の下部に毛が多く見られました。

この植物は、地上部はコタネツケバナやコバナタネツケバナによく似ています。

特徴は、茎の途中で発根すること、栄養繁殖が盛んに行われること、単葉の葉が見られることなどにあり、採取して観察させていただくことにしました。

その結果、発芽からまもない時期に単葉の葉が見られることや、いくつかの栄養繁殖の形態を確認しました。

 




アキノタネツケバナ-s1
茎の途中で盛んに発根していたもの。
ただし、このようなものは薄く土をかぶった状態で見つかりました。田であれば、水があるのでもう少し発根しやすいのかもしれません。(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-s1-2

一番最初はここから伸びたようです。ここに付く根は既に元気がない。
(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-s1-3

茎の途中から発根し、更に新芽を出してその基部からも発根していた。

アキノタネツケバナ-s2

茎の途中からのま発根は確認されなかったが、太まった根の途中から
新芽があがりはじめていたもの。(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-s2-2

ちょっとわかりにくい写真ですが、矢印部から新芽が出て、
そこから新たに発根していた。(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-s3

大きいものは、幅45cmほどの株になっていました。もっと大きなものもあった。
でも、畑地のせいか、発根していたのは赤矢印1カ所のみ。(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-s4

若い株では、確認したすべての株で根際に葉腋部やその痕から盛んに発根する様子が確認できた。右上斜めに伸びるのはいずれも葉柄。(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-s5

発芽してまもない株。根際に単葉の葉が3つ見られた。この葉はこの後すぐに
枯れてしまうようで、もう少し成長した株では見られなかった。(2020.2 千葉市)

アキノタネツケバナ-全体5
春のものと同じ場所で秋(11/下)に見られたもの。
同じような感じですが、まだ茎の途中から初根するものは見られなかった。根生葉に見えるものの多くは倒れた茎に付く茎葉で、根生葉は小さく少ない。(2020.11 千葉市)

アキノタネツケバナ-全体6

根生葉は少ない。
(2020.11 千葉市)

アキノタネツケバナ-全体7

タネツケバナが多く見られる田んぼで見られたもの。姿は少し違いますが、周囲の状況からタネツケバナと想像しました。(2020.11 千葉市)

アキノタネツケバナ-全体8

比較用1と同じ株を上から写したもの。根生葉は少なく茎は横に匍っている。
これで2株でした。(2020.11 千葉市)

アキノタネツケバナ-全体9

抜去した2株のうちの1つ。茎が倒れて途中から発根している。
発根した部分からは新たな茎が伸び始めている。(2020.11 千葉市)

アキノタネツケバナ-比較用4

発根は茎の節ではなく、子株の基部。写っている葉は根生葉ということになる。
毛はほとんど見られないが、季節・環境要因の可能性もある。(2020.11 千葉市)

私の見たアキノタネツケバナは、ほぼアキノタネツケバナのスペックを満たしていると思われますが、これが正しいとすれば、アキノタネツケバナはやはりタネツケバナの1型かもしれないと思い始めました。

ここに掲載のアキノタネツケバナとしたものは、畑の脇の林縁の苔むした場所で見られたものですが、比較用の写真はすぐ近くの田んぼのものです。細い水流の脇で見られ、周囲に普通のタネツケバナが多数みられました。

推察ですが、比較用の個体はタネツケバナが秋の暖かいうちに成長して倒れ、茎の一部が降雨などで水量が増えた際に半ば埋まった結果、子株が生じるのと同時に発根したものではないかと思いました。
従って、タネツケバナも状況によっては茎の途中から発根するということですから、それがアキノタネツケバナの特徴的な形質ではないということになります。

また、側小葉が裂ける点についても、同時期に見られた典型的なタネツケバナも同様に裂けており、これも区別点にはならないと思いました。

それ以外のものを比べて見ると、まっすぐ立ち上がる茎がないこと、根生葉がより少ないことの2点になります。湿性地ほどには適応できない場所でタネツケバナが育つと、根生葉は小さくて少なくなり、それにより茎が安定せず倒れやすいといった経緯も想像出来ます。

現段階ではまだ結論は出せませんが、甚だ怪しげになってきました。
あと数回見て、近日中に私なりの結論を出したいと思っています。