アザミの総苞の観察点

アザミについては近年、新たな研究によって種が爆発的に増えています。
それらの多くは、従来は既存種の変化として片付けられてきたものが多いのではないかと思いますが、総苞等の詳細な観察によって新たに分けられたり、統合されたりしています。
例えば、関東に住む者にとってもっとも身近なタイアザミですが、従来はトネアザミと同じものとされていましたが、腺体の有無などから、トネアザミはナンブアザミの変化型(分類上はナンブアザミ)とされ、タイアザミは独立種とされるようになりました。
従って、今後はトネアザミの名称をタイアザミに用いることは出来なくなりました。

以下、総苞の観察点をいくつか簡単にまとめてみました。

観察例
(カズサヤマアザミ)

「総苞は狭筒型、クモ毛があり、総苞片は12列で短く開出し、外片が短く、内片は膜質、
中片に狭長楕円形の腺体があって粘る」・・・というような観察が出来ます。


1.総苞片の列数の数え方
  総苞片は列数は、下から斜めに数えることが推奨されています。写真で数える場合は、途中から折り返しても良いとされています。

どのような頭花を選ぶか・・・枝先の頭花で数えるのが良いようです。咲き進むと、次第に頭花が小型となり、総苞も小さくなって、総苞片も少なくなることがあります。また、内片は痛みやすく、小花や冠毛に紛れて見逃すこともありますから、できるだけ開花まもないもので観察すると良いように思います。

 

2.総苞片の付き方       「開出しない」「圧着」
 


ここに掲げたのはほんの1例です。
「開出しない」とされるものでも、先端だけ開出するものも多く見られます。
「開出」とされるものでも、片の中間部付近から開出するものから上半だけ短く開出するものまであり、外片が反曲するものもよく見られます。
個体差も決して小さくはありません。

 

(ウエツアザミ)
  「斜開」   「開出」   「開出し反曲」
 

(ヤチアザミ)

(イワキヒメアザミ)

(キタカミアザミ)


3.腺体       「腺体があって粘る」
 


腺体とは、総苞片の上部にある腺で、ネバネバした粘液を出しています。
多くの種は、中片で見られますが、よく粘るものでは外片や内片で見られるものもあります。
腺体は線形~狭長楕円形で、腺のある部分は盛り上がっていて、艶やかに見えます。
ただ、腺体のように見えても、腺が退化して形だけのものがあり、「痕跡的」という表現がされます。
また、痕跡すらない種もあります。

 

(ネバリアズマヤマアザミ)
  「腺体が発達し、非常に粘る」   「腺体は小さく、少し粘る」   「腺体は痕跡的で粘らない」
 

(ジョウシュウオニアザミ)

(ハナマキアザミ)

(ノハラアザミ)


4.特異な特徴   「縁が膜質」   「縁に小刺がある」
 


それぞれいくつかの種で見られる特異なものです。


(フタマタアザミ)

(ハリカガノアザミ)
     
片の縁が薄く、多くはフリル状になる
先端の刺の他に、片の縁に小刺がある


※ アザミの観察は、常に刺との戦いです。軍手などをするのも一手ですが、容易に貫通しますし、軍手の繊維片がアザミに絡んでしまいがちで、細部の観察の妨げになることがあります。多少のキズや痛みに耐える覚悟は必要ですが、ケガには気をつけましょう!