イブキジャコウソウ / ハマジャコウソウ / ヒメヒャクリコウ

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シソ科 Lamiaceae
シソ科 Rabiatae
岩の割れ目や礫地などにピンク色のカーペットのように広がる可愛い花です。
矮性低木で、茎は地を匍って拡がり、丈はふつう10cm以下ですが、低山のものはやや立ち上がり、20cmくらいになることがあります。葉は5-10mmの卵形~狭卵形、先は鈍頭、両面に腺点が見られます。
花は茎頂に短い穂状に付き、花冠長さ7-8mm、ピンク色、下唇は等しく3裂、雄しべは2本が短く2本が長い。
葉面に毛のあるものは、ヒメヒャクリコウ、海岸で見られるものはハマジャコウソウと呼ばれます。

 

2021.6.24 更新
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イブキジャコウソウ-全体

茎は地を匍い、カーペット状に広がります。
(2008.7 白馬岳)

イブキジャコウソウ-全体22

茎の先端は立ち上がり、茎頂に花を沢山付けます。
(2009.8 磐梯山)

イブキジャコウソウ-全体3

地を匍った茎から立ち上がっています。
(2014.7 青森県深浦町)

イブキジャコウソウ-花2

萼裂片は鋭く長く尖り、毛が見られます。
(2015.7 青森県 旧・三厩村)

イブキジャコウソウ-花2

上唇は浅く2裂、下唇は大きく3裂。中央裂片が長く伸びるものもあります。
雄しべは4本で2本が長い。花冠基部に毛が見られます。(2014.6 青森県深浦町)

イブキジャコウソウ-花3

花冠外側にも毛が見られました。
(2018.7 北ア・八方尾根)

イブキジャコウソウ-葉

葉は十字対生。
(2014.6 青森県深浦町)

イブキジャコウソウ-葉2

狭卵形で浅い鋸歯があるか全縁。表面には小さな腺点が無数にあり、
写真のように葉の基部に長い毛が見られることも多い。(2018.7 北ア・八方尾根)

イブキジャコウソウ-葉3

葉表拡大
(2021.6 長野県 旧・真田町)

イブキジャコウソウ-葉4

葉裏。
(2018.7 北ア・八方尾根)

イブキジャコウソウ-葉5

葉裏拡大
(2021.6 長野県 旧・真田町)

イブキジャコウソウ-茎

茎には細毛が見られます。
(2018.7 北ア・八方尾根)

イブキジャコウソウ-低山

標高1000m強の低山の森の中で咲いていたもの。全く印象が異なり、
撮影途中まで全く本種だと気づきませんでした。(2009.7 長野県茅野市)

ヒメヒャクリコウ
(var.canescens) 葉の表面に毛があるものはヒメヒャクリコウと呼ばれるそうで、
探してみたことがあります。ただ、普通のものにも縁などに毛があるものがあり、
区別は微妙という印象でした。(2006.8 白馬岳)

ハマジャコウソウ

北地の海岸風衝地で普通に見られるものは、ハマジャコウソウ(f. maritimus)と思われますが、やや葉が厚い以外、特に差異に気づかなかった。(2015.7 青森県 旧・三厩村)

 

イブキジャコウソウ属の植物は学名「Thymus」が示す通り、天然ハーブの「タイム」としてヨーロツパなどではよく利用されます。最も多く利用されるのは「タチジャコウソウ」「キダチジャコウソウ」と、栽培改良種の「ガーデンタイム」と呼ばれるものだそうです。

タイムには強い殺菌、防腐作用がある物質が含まれているため、肉・魚料理には欠かせないスパイスだったようです。イブキジャコウソウも近縁なので利用できなくはないとは思いますが、そういった話は聞いたことがないので、あまりおいしくないのかもしれません。勇気ある方は、保護地域以外のもので少量お試し頂くと良いかと思います。(毒はないはずですから、おいしいかまずいかだけの話だと思います。)

4-5人分で1茎程度あれば充分なはずですから、根こそぎ採るのはやめましょう。 充分に乾燥させてからのほうが、香りが良いようです。なお、タイムは「肉料理、魚料理、クラム・チャウダー、コロッケ、トマト料理、スープなどに最適!」(SB食品ホームページ)だそうです。