(参考) ヤハズヒゴタイ -従来の考え方-

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キク科 Asteraceae
キク科 Compositae
(従来の考え方で記述しています)
山地帯から高山まで、岩礫地から草地、林内まで姿を変えて対応しているトウヒレン。地域差も大きい。
丈は30-55cm、根生葉や下部の葉は5-13cmの卵形~長楕円形で、しばしば粗く羽状中裂したり、中間部が湾入したりします。長柄があり、柄には翼があって茎の翼に続きますが、ないものも多い。
頭花は散房状に付き、総苞は卵形~広卵形、総苞片は5-6列で先端が尖り、ほとんど開出せず、紫色を帯びるものも多い。
地域・環境によりいくつかの異なる型があります。(型の特徴は「まとめ」タブ参照)
高山型は変種・シラネヒゴタイとして分けられます。
なお、名が紛らわしいヤハズトウヒレンは姿も全く異なる別種で、東北~北信地域の高山帯で見られます。

近年、本種は富士周辺のものに限るとされ、それに従えば、ここに掲載の秩父のものはキンプヒゴタイ(S. kimbuensis)、南アと北八ヶ岳のものはタカネヒゴタイ(S. kaimountana)に分類されます。

 

2018.1.23 更新
  • 全体(北八ツ)
  • 全体2
  • 全体3
  • 花2
  • 葉2
  • 全体(秩父)
  • 花2
  • 全体(富士)
  • 全体2
  • 葉2
  • 全体3
  • 全体(南ア)
  • 全体2
  • 花2
  • 葉2
  • まとめ

ヤハズヒゴタイ-全体
この型は林縁などで多く見られ、総苞片の先は細まって伸びますが、凸の基部の幅が広く、
あまり線形にはならない。総苞が多少黒味を帯びるものもあります。
葉は長楕円形で湾入するものが多く、茎の翼はないものが多い。(2016.8 長野県北八ヶ岳)

ヤハズヒゴタイ-全体2

向陽地で見られた、丈がやや大きいもの。このあたりのものは特徴がわかりやすく、
他種もなく、個体数もまとまっていて本種の観察地としては絶好。(2016.8 長野県北八ヶ岳)

ヤハズヒゴタイ-全体3

林内の小型のもの。茎葉が小さく、根生葉ばかりが目立ちました。
(2016.8 長野県北八ヶ岳)

ヤハズヒゴタイ-花

総苞は狭鐘形、片は5-6列で外片は広卵形。
(2016.8 長野県北八ヶ岳)

ヤハズヒゴタイ-花2

総苞突起部の基部は多少幅があります。外片はあまり短くならない。
(2016.8 長野県北八ヶ岳)

ヤハズヒゴタイ-葉

本種の葉は変化に富み、卵形~長楕円形、羽状になったり湾入したりしますが、
このエリアのものは葉が長く、湾入するものが多い。(2016.8 長野県北八ヶ岳)

ヤハズヒゴタイ-葉

湾入する根生葉。同じ湾入でも、タカオヒゴタイとは少し違うような気がする。
(2009.8 長野県八ヶ岳)

ヤハズヒゴタイ-秩父
この型は多くは林内の草地にあり、全体に華奢なものが多く、頭花はまばらで小さく、
総苞も細く、 片は急に細まって長く伸びます。葉は長楕円形、茎の翼はないものも多い。
(2012.8 山梨県 旧・小淵沢町)

ヤハズヒゴタイ-花

頭花は小型でまばら、総苞は細い。
(2009.8 山梨県大菩薩嶺)

ヤハズヒゴタイ-花2

総苞片の先は急に細くなって長く伸びます。外片の先はあまり伸びないのが
この型の特徴。(2012.9 山梨県 旧・小淵沢町)

ヤハズヒゴタイ-茎

この型の茎の翼は薄く、ないものも多い。
(2009.8 山梨県大菩薩嶺)

ヤハズヒゴタイ-富士

5合目の林内にあったもの。
(2017.9 静岡県富士山)

ヤハズヒゴタイ-全体2
富士周辺の型に近いもの。本来のこの型は頭花はやや大きく、
総苞片の先があまり長く伸びず、突起の基部はあまり細まらず、短い凸に終わります。
茎に翼がしっかり付きますが、写真のものはほとんどない。(2010.8 山梨県三ッ峠山)

ヤハズヒゴタイ-花

総苞は本種の典型に近く、片の凸部は三角状で短く、特に外片は短い。
(2017.9 静岡県富士山)

ヤハズヒゴタイ-葉

葉は湾入するものが多く見られました。
(2010.8 山梨県三ッ峠山)

ヤハズヒゴタイ-葉2

茎が立ち上がらなかったロゼット。茎が立ち上がって花が咲いても、ロゼットは残るものが多い。
(2017.9 静岡県富士山)

ヤハズヒゴタイ-茎

茎の翼は薄いものが多かった。
(2017.9 静岡県富士山)

ヤハズヒゴタイ-全体3

翼がはっきり確認できたもの。
(2010.8 山梨県富士山)

ヤハズヒゴタイ-南ア
従来ミヤマヒゴタイ(f. major)と呼ばれたもの。亜高山帯の向陽地にあり、全体にしっかり
としていて、シラネヒゴタイまで連続的に変化します。総苞は北八ヶ岳のものと同じですが、
黒いものが多い。葉は長三角状~長楕円形、中部までしっかり付く傾向。(2013.9 北岳)

ヤハズヒゴタイ-全体2

(2015.8 山梨県北岳)


ヤハズヒゴタイ-花

ここのものは、総苞がしばしば黒い。
(2010.8 山梨県北岳)

ミヤマヒゴタイ-花2

典型に近いもの。片5列、先端部の突起基部の幅が広く、長く伸びます。
外片と内片の長さの差は少ない。(2015.8 山梨県北岳)

ヤハズヒゴタイ-葉2

中部以下の葉は羽状で少し湾入するものが多い。
(2015.8 山梨県北岳)

ヤハズヒゴタイ-葉

(2010.8 北岳)


ヤハズヒゴタイ-茎

わずかに翼が見られました。
(2015.8 山梨県北岳)

(従来の考え方で記述しています)

<1.富士山とその周辺山域> (観察:三ッ峠山、三国山(山中湖村))
頭花はやや大きく、総苞片の先があまり長く伸びず、突起の基部はあまり細まらず、短い凸に終わる。葉は卵状楕円形のものが多く、茎の翼は明瞭。タンザワヒゴタイにやや近い姿。

<2.御坂山地北側~秩父、八ヶ岳東側と南側中腹> (観察:大菩薩嶺・編笠山)
多くは林内の草地にあり、全体に華奢なものが多く、頭花はまばらで小さく、総苞も細く、片の先は線形で長く伸びる。葉は長楕円形、茎の翼はないものも多い。

<3.八ヶ岳西側中腹、南ア山地帯> (観察:蓼科山中腹 美濃戸上流 北岳大樺沢下部)
総苞片の先は細まって伸びますが、秩父などのものより短いものが多い。凸の基部に幅があり、あまり線形にはならない。総苞が多少黒味を帯びるものが多い。葉は長楕円形で湾入するものが多く、茎の翼はないものも多い。

<4.南ア亜高山帯> (観察:北岳大樺沢左股)
亜高山帯の向陽草地にあり、全体にしっかりとしていて、シラネヒゴタイまで連続的に変化する。総苞は北八ヶ岳のものと同じだが、黒いものが多い。葉は長三角状~長楕円形、中部までしっかり付く傾向。
高所のものほど、茎頂の頭花が他より大きいものが多くなる。

以上 bull. Kanagawa Pref. Mus., No 19, 1990, 89-100 を参照して記述しましたが、文献と異なる内容(私見)が含まれています。