イワテチャボカラマツ (ニオイカラマツ)

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キンポウゲ科 Ranunculaceae
従来ニオイカラマツと呼ばれたもの。
丈は15-40cm。全草に腺毛がとても密にあり、腺から出る分泌物には臭気があります。
茎は稲妻型に曲がり、葉は2-4回3出複葉で小托葉はなく、小葉は小さく5-10mm、全体にシワが多く縁は裏面に反り、葉脈がはっきりと窪んで裏面に浮き出ます。葉裏には脈上を中心に腺毛が密にあり、葉表にもあり、その他、葉軸、小葉柄、托葉、茎にも腺毛が密に見られます。
花は茎頂に~20個ほど付き、花柄は2-4cmと長い。萼や花糸、葯は赤味を帯びることが多い、花糸は長くて垂れ下がります。 葯隔は突出する。萼は早落しますが花期にもしばらく残る。花序、花柄、萼、子房にも腺毛が見られ、果実はやや潰れた楕円状球形で腺毛は残ります。

※1 ニオイカラマツの学名はvar. foetidumですが、大陸のものと同一でない可能性があり、あえて以前の和名・学名を使用しています。(コメント参照)
※2 環境省では、第4次リストからニオイカラマツをチャボカラマツと同じものと判定した模様 第3次リスト(2007)では、どちらも2類 なお。岩手県版2014では、チャボカラマツはB(2類相当)判定、ニオイカラマツ(イワテチャボカラマツ)はA(1類相当)判定で、別種と主張している

 

2019.8.17 更新
  • 全体
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  • 全体5
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  • 花2
  • 花3
  • 花4
  • 実2
  • 葉2
  • 葉3
  • 葉4
  • 葉5
  • 葉6
  • 葉7
  • 標本
  • 標本2
  • 別種とするに至った経緯

ニオイカラマツ-全体
垂直に切り立つ石灰岩の岩場で見られます。
触れると明らかな臭気があり、触れた手にも臭気がしばらく残りました。花柄は長く、花糸も長くて葯が垂れ下がっています。(2016.5 岩手県C3)

ニオイカラマツ-全体2

岩手県博の標本地のもの。臭気はやや弱く、葉裏の腺毛も少し短いが、密度は同じ程度。
茎や葉序の軸の腺毛はやや少ない。(2016.5 岩手県B)

ニオイカラマツ-全体

見つけた自生地の中で、唯一向陽地にあるもの。
臭気はごくわずか。腺毛も短いが密に見られました。(2013.5 岩手県A)

ニオイカラマツ-全体4

(2013.5 岩手県A)


ニオイカラマツ-全体2

2016年に新たに見つけた自生地。群生しており多数見られました。
(2016.5 岩手県C4)

ニオイカラマツ-全体6

果期。
(2016.5 岩手県A)

ニオイカラマツ-花

咲き始めの状態。小花柄が長く、4cm近いものも見られました。
陽当たりの良くない場所のものの萼片は必ずしもも赤くない。(2016.5 岩手県C3)

ニオイカラマツ-花2

カラマツソウの花糸はただでさえ風に揺れやすいのに、本種は花糸が
より長いので、数十枚連写して得た1枚。(2015.5 岩手県A)

ニオイカラマツ-花3

萼に腺毛が多く見られます。
(2015.5 岩手県A)

ニオイカラマツ-花4

花は終わりかけで子房が膨らみだした状態。萼は付いたまま枯れたようになり、
その後脱落する。少なくとも、早落するとは言い難い。(2015.5 岩手県A)

ニオイカラマツ-実

若い果実。始めは扁平な楕円形で8本前後の稜があり、全体に腺毛が密生します。
柄にも腺毛がある。白い点は花粉。(2016.5 岩手県A)

ニオイカラマツ-実

次第に厚みが出ますが、断面が細い楕円形になるくらいまで。
(2016.6 岩手県C3)

ニオイカラマツ-葉

葉は2-4回3出複葉で小葉は5-10mmと小さく、丸く粗い鋸歯があります。
小托葉はありません。光のせいで葉の色が緑色に見えますが・・・(2013.5 岩手県A)

ニオイカラマツ-葉2

葉の表面は青みがあります。
(2015.6 岩手県C2)

ニオイカラマツ-葉3

(2015.6 岩手県C2)


ニオイカラマツ-葉4

ルーペなどでも見えないような微細な腺毛が見られます。写真の横幅は5mmくらい。
(2015.6 岩手県C2)

ニオイカラマツ-葉5

葉裏に脈が浮き出ます。この状態でも腺毛ははっきりわかります。
(2015.6 岩手県C2)

ニオイカラマツ-葉6

この写真の横幅は2-3mmほど。従って腺毛は0.05mmほどあると思われます。
カラマツソウ属の腺毛としては充分に長い。(2015.6 岩手県C2)

ニオイカラマツ-葉7

葉序の軸や小葉柄にも腺毛がびっしりとある。
(2016.5 岩手県C3)

ニオイカラマツ-葉7

腺毛がやや長く多いもの。茎、葉柄、小葉柄、葉の両面、花柄(左にのびるもの)・・・これら全てに腺毛が見られました。長い毛は腺毛に付着したもので無関係。(2014.5 岩手県A)

ニオイカラマツ-標本
1978.8 村井先生による"岩手県A"の標本の葉裏 @22719。
チャボカラマツとされていますが、後にイワテチャボカラマツと改められたもの。
許可を得て撮影。(2015.6 岩手県博)

ニオイカラマツ-標本2

前者と同様の標本。1977.7.23 "岩手県B"で採種されたもの @22718
(2015.6 岩手県博)

従来は臭気が充分に確認できなかったため、チャボカラマツと合併掲載の形を取っていましたが、2015.6 明らかな臭気のある個体を確認し、2016.5 に開花した群落を確認、2016.6に果実を確認し、本種であることを確信しました。(※1)

本種はチャボカラマツと同じものであるという説もありますが(※2)、腺毛の量がケタ違いであり、臭気も明瞭にあることから、「岩手県の石灰岩地帯に固有の系統strainとみなすのが 適当」であると認めて頂きました。
Y-Listなどに掲載のニオイカラマツ(var. foetidum)は大陸などに自生するチャボカラマツの基準変種ですが、上記の言に従って「イワテチャボカラマツ(var. iwatense)」の名を使用するのが適当と判断されました。 (※3)

なお、岩手県内にはイワテチャボカラマツ(ニオイカラマツ)とチャボカラマツがほぼ同所的にあるとされていますが、チャボカラマツとされるものは見つからなかった。
(イワテチャボカラマツ(ニオイカラマツ)に隣接してよく似たものが多数あったが、アキカラマツとの雑種と考えた)

※1 臭気は図鑑などに記載の「悪臭」ではないと感じました
※2 J. J. B. 80: 343, f. 1 & 2 (2005)
※3 Y-Listでは現在もニオイカラマツとして掲載されています。