地質1 中央構造線

地質は植物に大きな影響を与えます。日本列島は4つのプレートの境界にある島ですから、非常に複雑な構造をしています。ちょっと歩くだけで、植生が全く変わってしまうこともよく目にされるかと思います。
たとえば、白馬岳から大池に抜ける時、急に花が激減してしまいますが、これも地質要因で、石灰岩が交じる白馬岳から、火山岩に変わったためです。
地質を多少なりとも理解することで、どこにどのような植物か見られるかを予想することもできますので、植物に関わる基本的なことだけ書き出してみました。

1.中央構造線
7.火山
     

日本列島は、列島形成前後に出来た大きな3つの断層 (中央構造線、棚倉構造線、フォッサマグナ) により区切られており、それが植物境界であるものが多く見られます。


中央構造線
ソハヤキ要素
 日本列島が大陸の一部であった頃、海洋プレート(イザナギプレートと呼ばれます) に引きずられて出来た長大な断層の1つ。フォッサマグナが形成される遙か以前のことです。九州天草から四国北部、紀ノ川を通り、三河湾から内陸に入って諏訪市付近まで明瞭な痕跡が残っています。それ以東は火山や河川堆積で不明瞭ですが、岡谷市から佐久平、富岡市を抜け、鹿島灘に至ると推定されています。
 中央構造線が中部地方で大きく北に湾曲している理由として、日本列島形成以降に起こった伊豆島嶼の衝突が上げられます。現在の甘利山、櫛形山、御坂山塊、丹沢などは元は島であったものがフォッサマグナに入り込むように衝突し、中央構造線を北へ大きくねじ曲げてしまったと考えられています。それに従えば、現在の秩父地域(当時はフォッサマグナの中央にあった島)は、丹沢のあたりにあったと想像されます。
 この周囲は、古い時代の付加コンプレックスが露出しているため、特異な植物が多く見られることでも知られます。また、これ以南の西南日本外帯には特有の種が多く見られ、これらは「ソハヤキ要素」と呼ばれます。

 なお、中央構造線そのものは横ずれ断層で南側が東に動いておりましたが、現在はこの活動はしていません。が、現在フィリピン海プレートの影響で伊勢以西などで中央構造線に沿うように活断層が多くあります。これらの断層にも便宜的に中央構造線の名が使用されますが、本来のものとは異なります。場所も数kmずれてしまう所もあります。

棚倉構造線  茨城県水戸市北方から山形県酒田市付近へ抜ける構造線で、東北日本と西南日本外帯を分ける重要な構造線です。茨城県内から郡山市付近までははっきりしていますが、以北については火山などで不明瞭になっています。中央構造線と繋がっているのではという意見もあります。
 高山性の植物などを中心に、この構造線付近で種が分かれるものが複数あると認識しており、花の種の豊かな月山はこの境界線付近にあると思われます。