白馬岳周辺の地質と植生の相関

総論1-7 8.白馬周辺 9.唐松八方 10.南ア北部 11.富士周辺
12.秩父 13.足尾南東部 16.早池峰周辺 17. 利根川    

白馬岳は花の山として人気があり、事実、非常に多くの高山植物に出会えます。が、どこも素晴らしいわけではなく、部分的には花が非常に少ない場所もあります。地質図を見ると、その謎が少し解けるように感じます。

この図は、独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センターの地質図、及び国土地理院地形図を参考にして、新たに作成しました。

 白馬岳は地質と植生の相関が非常にはっきりと現れていてわかりやすい山です。行かれたことのある方ならば、花を多い場所は火山岩以外の場所・・・特に上図の黄色と紫色で示す場所と一致する・・・と思い出して頂けることと思います。 

黄色で示す地層は付加コンプレックスですが、この地層はオリオストロームとなっていて、特に1億年以上前の付加コンプレックスでは、海底堆積岩に石灰岩チャート、玄武岩などが多く混ざっています。花の多い白馬岳稜線や葱平、白馬尻などは全てこの地層です。

白馬岳のオリストストロームは約2億5千万-3億年前の海底の地層が大陸プレートに潜り込む前に崩壊したもので、日本ではかなり古い部類の地層です。その頃の日本は今より遙かに低緯度にあったと言われていて、南洋の珊瑚でできた石灰岩が多く含まれます。
   白馬岳を下って白馬大池方面に向かうと、三国境の少し手前から左斜面が砕けた礫地となり、そこにコマクサの群落が見られますが、ちょうどこのあたりから火山岩となり、ここから先は花が急に少なくなります。 砂礫の色が急に赤っぽくなるので、気づかれる方も多いのではないでしょうか? 

同様に、唐松方面に向かうと、丸山を下ると花が一度減りますが、鑓ヶ岳を越えて鑓温泉分岐から先は再び花が戻ります。鑓温泉方面に向かっても同様です。これら、花の多い場所は全てオリストストロームとなっている場所で、石灰岩が多く見られます。

白馬岳の植生はこの石灰岩が重要なカギとなっていて、石灰岩が侵入者を防ぎ、氷河期の生き残り植物を守ってきたことで、今日の素晴らしいお花畑が保たれているようです。

なお、朝日岳方面も、雪倉の避難小屋あたりからバリエーションが増えますが、こちらは蛇紋岩や玄武岩など、やや異なる要素が加わっています。五輪尾根の下部も蛇紋岩です。蛇紋岩地や玄武岩地も花の種の多いことはよく知られています。

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ご注意 地形図と地質図の間に、若干のズレが生じているかもしれません。
また、地質図を簡略化する際に誤りが生じている恐れもありますので、イメージとしてご利用ください。