秩父地方の植生に関わる地質

総論1-7 8.白馬周辺 9.唐松八方 10.南ア北部 11.富士周辺
12.秩父 13.足尾南東部 16.早池峰周辺 17. 利根川    


北関東以外の関東甲信越はフォツサマグナ帯で、大半は100万年前後の間に出来た火山か沖積平野ですが、秩父はフォッサマグナの取り残された島であったために1億年以上前の古い地層が残り、周囲と異なる植物がいろいろ見られます。

この図は、独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センターの地質図、及び国土地理院地形図を参考にして、新たに作成しました。

 「山」で見ると、秩父の主稜は雲取山-甲武信岳-金峰山ですが、この山稜には「秩父らしい」花はほとんどありません。
秩父らしさは石灰岩に関わるものが多く、石灰岩を多く含む地層はその北側に広がっています。

「植生に関わる地質」で見ると、秩父山域は次の4つで構成されます。北から、中央構造線に沿った火成岩地域(黄緑・綠)、1億年以上前の付加コンプレックス(黄色・橙色が中心の地域)、それより新しい付加コンプレックス(肌色が中心の地域)、深成岩(ピンク)の4つのブロックです。花が最も魅力的なのは、1億年以上前の付加コンプレックス(上図の黄色にオレンジや黄緑が混じるところ)の地域で、ここで、好石灰岩植物が見られます。

ただ、秩父の石灰岩帯はさほど広くありません。さらに、武甲山のように採掘地になっている所が多く、入山が規制されたり環境が破壊されていたりして、残されている場所は限られてしまっています。

が、好石灰岩植物が見られる場所は地質図上の石灰岩地以外にもあります。付加コンプレックスは大半がオリストストロームとなっていますので、この地域には地質図に現れない石灰岩を多く含む場所があります。ただ、白馬岳南ア西部の地層(2.5-3億年前)ほど古くなく、1-2億年前のものですので、石灰岩の量はそれよりは少ないので、局所的に点在しています。
  どこにあるかは、山を歩いて探すしかないようです。

なお、1億年以降の新しい付加コンプレックスは、他の地域でも石灰岩はとても少なく、チャートや玄武岩も多くはない様です。雲取山山頂はチャート、大菩薩嶺は東側が花崗岩で、植生が周囲と少しだけ異なるようにも見えます。


中央構造線に近いところにある付加コンプレックスの火山岩は苦鉄質(マグネシウムと鉄)で、希少種がいろいろ見られるようですが、筆者はこの地域に疎く、詳しくは判りません。知っている場所に限れば少しだけチャートと石灰岩も見られ、特異性が見られました。

秩父山域の北側に接する妙義・荒船などの山々は、第三紀火山の山体の一部が残ったもので、主として安山岩、玄武岩などで構成されています。



余談ですが、上図の「山中地溝帯」はアンモナイトなど、化石が多く出土することで有名な場所だそうで、主に1-1.5億年前の堆積岩のバンドです。


ご注意 地形図と地質図の間に、若干のズレが生じているかもしれません。
また、地質図を簡略化する際に誤りが生じている恐れもありますので、イメージとしてご利用ください。