学名の見方6


6.不明・未確定・誤り


6.学名が未確定のもの、不明のもの、新種、誤っているもの

1) 学名が不明も或いは未確定、新種の場合

不明な場合は、小種名の位置に sp. (speciesの略) を記述します。
さらに*****に類似の」という意味で、aff. ***** と続ける場合もあります。

例 : アレチニシキソウ : Chamaesyce sp. aff. prostrata

この例では、「Chamaesyce prostrata (ハイニシキソウ) に類似の不明種」 というように読み取れます。
この表記で記述されているものは、暫定的なものと思われます。

この記述方法は、私たちでも利用することが出来ると思います。

たとえば・・・アザミだけどよくわからない、でも、ノハラアザミに似ている・・・という場合・・・
Cirsium sp. aff. oligophyllum ・・・ とするのは、私たち素人ならば許されると思いますがいかがでしょうか。(Cirsium oligophyllum はノハラアザミ)

2) 学名が誤った解釈で使用されているもの

次の学名は、マムシグサのsynonym (同種異名・・・後述) として掲載されているフルの学名です。

例 : マムシグサ(synonym) : Arisaema serratum auct. non (Thunb.) Schott

auct.とは、auctorum の略で、当初の論文と異なる内容のものに付される名であり、この場合、(Thunb.) Schott の論文の内容ではない(non)・・・別の種ということ、つまり本来のArisaema serratum ではないということを示しています。
多くの場合、学名引用が誤っていることを指摘しているだけで、種であることまで否定しているわけではありません。
多数の誤り(拡大解釈等)が常態化していた場合などでよく用いられます。

いずれにしても、auct.の付く学名は、それが記された和種名に見合うものではなく、auct. non を取り除いた正規の学名は・・・

例 ; Arisaema serratum (Thunb.) Schott = カントウマムシグサ(標準)

です。安易にマムシグサの学名を Arisaema serratum と略してしまいがちですが、全く逆の解釈になってしまいますので気をつけたいと思います。(私は間違えないように、auct.を略さずに残しています)

なお、この例は、誤りの元となった著者名が抜けています。本来は、auct. BBB non AAA と記述します。 (本来のAAAさんの学説ではなく、BBBさんの誤認識であるの意)

(このマムシグサのsynonymが示す異解釈は、カントウマムシグサの名をマムシグサに改めて、類似9種を1種とまとめる考え方と思われます。これとは別の個々のsyninymの学名に統一性がないので、広義ではなく、別解釈と考えます。・・・サトイモ科学名対照表参照

3) 誤った記述により誤った種を指し示すもの

上記と似たもう1つのケースで、こちらは記述自体のエラーです。
次の学名は、コセリバオウレンのsynonym (同種異名・・・後述) として掲載されているフルの学名です。

例 : コセリバオウレン (synonym)
    Coptis japonica (Thunb.) Makino var. major (Miq.) Satake, excl. typo


excl. はexclude の略で、「除外する」の意、typo はtypographic error の略で「記述ミス」の意味です。

つまり、この学名は記述上にエラーがあることを意味しており、コセリバオウレンの学名として使用するのは不適当であることを示しています。
このコセリバオウレンの場合、セリバオウレンの誤りでしたので、今日ではセリバオウレンの学名として用いられています。

例 : Coptis japonica (Thunb.) Makino var. major (Miq.) Satake = セリバオウレン(標準)


この例の場合、発覚したのは2000年頃まで、数十年間誤りが発覚しなかったので、それまでの大多数の図鑑が誤っているということになります。従って過去の論文などもどちらで記述されたものなのか、種名だけでは判断できない場合があるかもしれません。

4) 裸名

裸名とは、「記載(ないし記載への文献参照)が不十分(もしくはまだ不十分)であるために学名として認められなかった名称」を指します。(「」内はwikipedia より引用)
つまり、正式な学名ではありません。

以下のように記述されます。

例 : キンボウスミレ Viola x inconcinna nom. nud.