■ 都市近郊のタンポポ事情
タンポポは個体数も多いことが災いして、とてもわかりにくいと感じます。
その理由は・・・
1.2倍体タンポポと倍数体タンポポが交配して様々な中間形態が存在すること
2.最近の物流事情などで容易に遠隔地に運ばれていること
などがあるかと思います。
私の近隣では、カントウタンポポの他、エゾタンポポまたはシナノタンポポ、ヒロハタンポポ(トウカイタンポポ)などが比較的近い場所で咲くところがあり、セイヨウタンポポ、アカミタンポポと、在来種との交雑種などもあります。特に果樹園や牧場の廻りの林床などにそのような傾向があり、、遠隔地からワラや肥料、種子や苗、牧草などがまとまって輸送されてくるせいではないかと思います。都市近郊の自然公園なども同じような状態ではないでしょうか?
こうなってしまったものを区別するのは容易ではないですが、いくつかバリエーションを並べてみたいと思います。
1.タンポポの分類 |
■ タンポポの分類
ゲノム倍数*1 | (東北~甲信越に自生する種のみ記載) | |
モウコタンポポ節 (低地・暖地性) | 2倍体 | カントウ(ヒロハ、シナノ、オキ、ウスジロ)、カンサイ |
3-5倍体*2 | オクウスギ、シロバナ、クシバ、ケンサキ、ツクシ、キビシロ | |
ミヤマタンポポ節 (山地・寒冷地性) | 2倍体 | ユウバリ、オオヒラ |
3-8倍体 | エゾ(クザカイ)、ミヤマ(ヤツガタケ、シロウマ)、シコタン、クモマ | |
外来雑種 *3 | 3倍体 | セイヨウタンポポ、アカミタンポポ |
*1) ゲノムとは、遺伝子のセットのこと、人は1セット23個の染色体を両親から1setずつを受け取り、2倍体。(2n=46と記述されます)
*2) 3倍体以上のものを倍数体と呼ぶこともあります。
*3) セイヨウタンポポやアカミタンポポは、それ自体も雑種であり、正確には種ではありません。そのため、どの節にも含まれません。
3倍体以上のタンポポは、単為で無融合生殖(*4)を行います。種子を作るために受粉を必要とせず、種子は親のクローンとなります。
セイヨウタンポポが単為の無融合生殖であることはよく知られていますが、ミヤマタンポポやエゾタンポポ、シロバナタンポポなども同様です。
3倍体以上のタンポポは、遠隔地に種子を飛ばして、そこで繁殖する能力を持っています。
2倍体タンポポは、有性生殖です。
他の植物個体の花粉がないと受精せず、種子を作れません。
従って、遠隔地に種子を飛ばしても、1個体では子孫を残すことが出来ません。
この違いが、タンポポの分布や交雑に大きく関わってきます。
*4 「無融合生殖」とは、無性生殖の一種で有性生殖に対する表現。単為生殖でもあるが、別表現。